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プロローグ -- 本編 1 ・ 2 ・ 3
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         番外編 1
2-5

「……異常性愛者、ですか」
私は眉をしかめる。決して、聞いていて気持ちの良いことではない。

「そうだ、子どもを狙って攫い、痛めつける。その行為に欲情するんだそうだ」

「うっわ、それはまた面白い人が回ってきたもんだね。
その子どもってのは、性別は問わないの?あと、年齢のボーダーラインはどこら辺?」

「今まで起きた13件の事件の中で、男が4人、女が9人だ。
傾向から言えば、どちらかと言うと女児を好んでいるようだな。平均年齢は10、3歳ってところだ」

「犯人は男……でしょうか」
我ながら短絡的な考えだとは思うが言ってみる。

「そうだな、今回掠われたのも女だ。そう考えるのが妥当だろう。だが……」

「ショタコンって線も捨て切れないよね〜。実は数はロリコンと同じくらい多いんだよ?」
自慢気に私の方に顔を向けるセラ。

「……し、ショタ、コン?って何ですか?新手の職種の一つか何かでしょうか?」

「あのね、ショタコンっての、のわぁっ」
再びなる快音。
何だか、このデコピンがセラの記憶の戻らない原因な気もしてきた。

「くだらん事は教えんでいい。とりあえずはどっちも特殊な趣味くらいと考えておけ。
……話を戻すぞ。隣街のカルラで市長の娘さんが掠われたことは知っているか?」

頷く私とセラ。やはり、話していたように犯罪に巻き込まれたのだろうか。

「身代金だとか犯人からの要求はないのですか?」

「今のところはな。しかし、このまま要求がなければ、例の奴の仕業という確率が高い。
加えて、これは杞憂かもしれないんだが、3日前からメルーの姿が見えない」
心辺りは?という視線をこちらに向けてくる。

「私はここ数日は会ってませんね。ギルドには足を運んでませんでしたから」
訓練場には寄っていたが、嘘は言っていない。

「う〜ん、私も見た覚えはないなぁ。ここに来てまだ日も浅いし、あんまり歩き回ってもいないしね」

「そういえば、セラはいつからここに?」
ふと思い付いたので聞いてみる。
もう数年来の友人のような感覚になっていたので、不思議にも思っていなかったけれど。

「私?私は5日前からここにいるよ。
リドに助けられてここに匿ってもらってるってわけ」
何故か自慢げに話すセラ。何でだ。

「そうなんですか?」
リドにも一応聞いてみる。

「あぁ、望寂の森で拾った」
しれっと、とんでもないことを言っているが、
リドの場合は普通のことなので私も流す。

「二人とも、追っていた者に心辺りはないのですか?」

「私はここで起きてからの記憶しかハッキリしないからね〜。全くだよ」

「私も特に見てはいないな。拾った時にはセラしかいなかった。
  あー、でも手がかりといえば、近くに黒い髪が落ちてたけどな」

「黒い髪、ですか。珍しいですね?最近はめっきり見かけなくなりましたが。
  ……それにしても、元忌種ですか。困ったものですね」

「恐らくそいつがセラを襲った犯人だろうな。
襲っておいて命を奪わなかったのは不思議だが」

「その犯人が今の誘拐犯ということは?」

「可能性は無くはない、だが、一応傷害事件ではあるからな。
その黒髪の奴も一緒に追ってくれ」

「はい、わかりました。それではそろそろ向かうとします。行こう、セラ」
そう言って立ち上がるが、セラの反応がない。

「……セラ?」
不審に思って顔を向けると、両肘を机について、
手のひらに顔を乗せた形で器用に寝ているセラが見えた。
その後、再び快音が響いたことは言うまでもない。
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